なぜ狂犬病予防接種が必要か?
先日の四国犬脱走の一件から、改めて狂犬病予防接種についてがクローズアップされています。
中には、日本では根絶されたのに果たして予防接種は必要か?という声も聞かれます。
今回はこれについて考えてみましょう。
日本はアジアで唯一の狂犬病清浄国(発生のない国)で、この狂犬病清浄地域(厚生労働大臣指定)は、世界でもわずかな国と地域しかありません。
しかし、それが今脅かされているという事実をご存知ですか?
2013年、日本の獣医療界に大きな衝撃が走りました。
同じ島国であり清浄国であった台湾で50年ぶりに、野生のイタチアナグマに狂犬病の発生が確認されたのです。
※狂犬病は全ての哺乳類に感染する恐れがあるので、犬だけでなく猫やフェレット、ハムスター、ネズミ、タヌキ、ハクビシン等にももちろん感染します。
観光地で有名なバリ島も、2008年までは狂犬病はありませんでしたが、この年狂犬病ウィルスが持ち込まれると、あっという間に全土に拡大蔓延してしまいました。
狂犬病が出た地域では、悲しい話ですが、感染の有無を問わず、野犬の一掃処分が行われたそうです。
日本での発生の可能性もゼロではない
日本での狂犬病発生の可能性がどのくらいあるか、考えてみます。
犬に限らず狂犬病に感染している動物がペットとして海外から持ち込まれる可能性は常にあります。
最近は珍しいエキゾチックアニマルの流行に伴い、検疫や制度の網をくぐって持ち込まれる動物達も少なくありません。
海外の事例ですが、2003年にボリビアで狂犬病に感染した状態でペルーから輸入されたハムスターが人を噛む事故が発生しましたが、その年の日本のハムスターの輸入数は約50万匹にものぼっていました。
また、狂犬病流行地のロシアとの貿易が多い北海道では、ロシア船から不法上陸した犬の存在が確認されたこともあります。
このように晒されている危険度に対して、体制も国民の意識も十分ではないと考えられます。
厚生労働省の統計によると、2022年度の狂犬病予防接種率は全国で70.9%でした。
90%を超えていた約30年前からここまで低下しています。
しかも、これは自治体に登録されている犬のうちの接種率なので、未登録犬を含めれば、接種率は更に低いものと予想されます。
この未登録犬の問題も深刻です。
自治体への登録をしなくてはいけないことを知らずに、もしくはあえてしないという選択をしている未登録犬が周りにはいるかもしれないということです。
日本人は「平和ボケ」しているとよく言われますが、狂犬病予防の面でも、半世紀以上狂犬病の発生が無く、撲滅されたと認識されている方が多いのかもしれませんが、それは狂犬病予防の意識と接種率が高かったおかげであって、接種率が低下している現在、もし狂犬病ウィルスが日本に持ち込まれれば、全土に拡大蔓延する可能性は大いにあります。
まずは私達飼い主が人の命、愛犬の命を守る為に、飼い犬の予防接種と登録を徹底することが大切です。